2025年1月11日(土)、アジア民衆史研究会2024年度第2回研究会を開催いたします。
会場・オンラインのハイブリットでの開催です。
ご参集のほど、よろしくお願いします。
テーマ「民衆蜂起をめぐる主体と構造」
概要
日にち:2025年1月11日(土)
時間:13:00~17:30
場所:早稲田大学早稲田キャンパス3号館709教室・オンライン(Zoom)
主催:アジア民衆史研究会
報告
衛藤安奈「中国国民革命期の都市労働者層における流動性と団体性、およびその政治的意義」
藤田貴士「大争議における労働者の意識と行動──1921年三菱・川崎造船所争議を事例として──」
タイムスケジュール
- 13:00 開会挨拶、注意事項の説明
- 13:10 第一報告(衛藤安奈氏)
- 14:30 第二報告(藤田貴士氏)
- 15:50 総合討論
参加費(レジュメ代)
- 会場参加:500円
- オンライン参加:無料
申込方法
申込にはGoogleフォームを使用します。参加を希望される方は、下記URLをクリックし、Googleフォームにメールアドレス等をご登録ください。どなたでもご参加いただけます。
2025年1月10日(金)17時までに招待メールをお送りいたします。
注意事項
- 申込は1月9日(木)までにお済ませください。
- 皆様の参加形態の事前把握のため、会場参加であっても事前申し込みをお願いします。なお、会場参加で申し込まれた場合でも、当日にオンライン参加に変更することは可能です。
- 報告者の研究成果を剽窃するなど、研究倫理に反する行為を行わないことを求めます。
- ホストが認めた者以外の録音・録画は禁止となっています。
- 会の運営に支障をきたすと判断した場合、ホストの権限で強制退出させる場合がございます。
趣旨文「民衆蜂起をめぐる主体と構造」
社会のなかに生きるさまざまな民衆を、歴史の主体としてどのように捉えればよいだろうか。民衆史研究は、かつての階級闘争史や人民闘争史とは異なり、民衆的主体の意義やそれが孕む問題を自己点検的に検証した。その代表例が、民衆思想史と呼ばれる研究潮流であり、アプリオリに措定された日本民衆という主体に対し、女性や沖縄、被差別部落などの観点から再考を試みた。しかしそれは、多分に問題提起的な立論であり、その実証的解明が課題として積み残されたといえる。いわゆるポストモダン以降、近代的な「主体」概念は成り立たないとの議論が隆盛するとともに、歴史研究者にとっては以前に増して主体の捉え方それじたいに自覚的であることが求められる趨勢となった。軌を一にして、民衆史研究も低調となり、歴史研究の本流から退却して久しい。
もっとも、どの時代においても圧倒的多数を占めている生活者たる民衆の存在について思索する作業は、現在も重要な意味を有しており、それを基点とする民衆史研究の意義はなお重大である。上にあげたような研究動向を踏まえたうえで、いま確実にいえることは、第一に、民衆に歴史上の役割や人間類型をあらかじめ投影することなく、等身大のその姿を実際の歴史過程に即して明らかにする必要があること。第二に、「民衆」という存在を一括りに捉えるのではなく、かれらの生のありようの背景に存するさまざまな足跡に目を配り、その多様な姿を明らかにする必要があること、であろう。その際には、彼らが生きていた地域や社会の構造との関係が改めて問題となる。
第一の等身大の民衆像を描く点に関わっては、近年、民衆暴力に着目した研究があり、当会も2022年度シンポジウム「東アジア近代における民衆暴力の諸相」を開催した。その含意はおおよそ、暴力を行使する主体として民衆が立ち現れる文脈を、時代や地域に即して読み解き、また比較史の視点から東アジア近代の歴史的経験について理解を深めようとするところにあった。その成果をふまえつつ、本年度は、上にあげた第二の点、すなわち主体と構造の関係に重点を置いて、運動の主体となる民衆のあり方を考えたい。
人びとが集団となって立ち上がる民衆運動は、社会の矛盾が内包された象徴的な出来事として歴史の重要な一場面であるが、その担い手や展開過程は、地域や社会の構造に規定されてさまざまである。民衆運動が秩序の転倒した非日常空間だとすれば、とりわけ日常から非日常へと転換していく運動の発生過程においては、社会生活上の諸関係がさまざまな力を働かせ、主体と構造の関係が顕著に表れるとともに、例えば運動のなかで暴力を行使するかどうかなど、その後の展開をも規定しうる。本シンポジウムでは、こうした民衆蜂起における主体と構造の関係に着目して、比較史の視点から、東アジア近代の歴史的経験について理解を深めていきたい。
以上の趣旨を念頭に、本シンポジウムでは、中国国民革命期の「労働運動」の意義を検討されている衛藤安奈氏、近代神戸の都市民衆運動を検討されている藤田貴士氏にご報告をお願いした。二つの報告からは、1920 年代、運動に参加した中国と日本の都市労働者の実態が浮かび上がる。活発な議論を期待したい。
(アジア民衆史研究会委員会)